テクニカルコラムコイル凍結防止策
空調機に組込まれている熱交換器(コイル)の凍結防止対策は、外気条件、運転条件などをもとに施設の重要性に応じて複数の対策を実施する必要があります。また、屋内設置か屋外設置か、OA混合空調機とオールOA外調機か、空気調和機の停止時、運転開始時、運転中と分けて考えると見落としがありません。
空調機の熱交換器(コイル)の凍結防止対策は重要
突然訪れる寒波。寒波が襲った次の日の朝は空調機の熱交換器(コイル)のチューブ凍結事故をよく耳にします。空調機の凍結事故は施設の空調機能の停止につながり、重要な問題に発展します。復旧には時間を要するため、事前の対策が重要な役割を果たします。
空調機運転停止時のコイル凍結対策
1.空調機のファン連動のモータダンパ
空調機への冷気の進入を防ぐために外気取入れダクト、ガラリにモータダンパを取付け、ファン停止時にモータダンパを閉鎖させてください。 (ダンパは気密構造が望ましい) 但し、寒冷地においては外気取入れダクト、ガラリにモータダンパを取付けただけではコイルの凍結を完全に防止することは出来ません。
2.外気取入口ガラリ
外気取入口(ガラリ)は風の動圧を避けるものとしてください。
3.凍結防止用電気ヒータ(裸火とならないもの)
外部設置の空気調和機やALL-OA外調機などはヒートロスがあり、外気ダンパによる全閉だけでは安心できません。空調機内への電気ヒータの設置をこ検討ください。
電気ヒータの回路はサーモスタット、温度ヒューズなどを組込みます。また、電気ヒータの設置位置は、冷気の溜まる場所としてください。(サーモスタットの取付位置は、電気ヒータが有効に作動する位置としてください)
4.循環ポンプ
加熱専用、冷却加熱兼用、冷却専用コイルは、凍結防止のため、送風機停止中でも水を流した状態(二方弁、三方弁全開)にし、温水、冷水の温度低下時に配管の凍結防止も兼ねて、循環ポンプを起動。必要に応じて熱源も起動させてください。
水量を極端に少なくするとコイル内の水量分布が悪くなり停留する部分が発生しますので、特に凍結の恐れのある地域では水量を絞らないようにすることをお勧めします。
起動用サーモスタットの位置、温度設定は、その目的、システムによって決定してください。
空調機開始時のコイル凍結対策
1.ウォーミングアップ制御
空調機の運転開始時は、外気を取り入れないウォーミングアップ制御を行い室内温度が上昇後、外気・排気ダンパを開けてください。より安全性が増します
2.予熱運転
ALL-OA外調機外調機は、運転開始時に、送風前少なくとも10~20分間ほどコイルに温水または蒸気を供給し、予熱運転を行ってください
空調機運転中のコイル凍結対策
1.ダクト接続位置
OA混合空調機の場合、一般的には外気温度が -10℃の場合でも混合空気温度は 5~15℃程度になり、凍結することはありません。しかし、空調機への外気ダクトと還気ダクトの接続位置関係が悪いと、外気と還気の空気の混合が悪くなり、部分的に空気が 0℃以下になりますので、十分外気が混合するようなダクト配置になるよう施工時に注意願います。
2.コイル設置の順番
ALL-OA外調機の場合、冷却専用コイル(水を抜かない、または冬期も使用する場合)の凍結防止のために加熱専用コイル、蒸気コイルを風上側に設置してください。(レヒータなどの使用はできません)
3.コイルの過大設計
加熱専用コイル、蒸気コイルは過大設計を避けてください。制御を行った場合、一時的に絞り運転を行うため偏流を起こし、凍結にいたる懸念があります。蒸気コイルには、偏流防止装置をヘッダ内に組込んでいますが、過度の蒸気絞り運転に対しては効力を失う可能性があります。
4.制御時の最小水量の確保
冷却加熱兼用コイルの場合、冷却能力でコイルの列数を設計すると暖房過大設計となり、制御運転水量を絞り過ぎないように温水温度を下げるなど、最小水量を確保する工夫をこ検討ください。
5.縦型コイルの採用
蒸気コイルは、凝縮水の流れを良くするため縦型コイル(VS型)とし、コイル出口配管には十分な勾配をつけて凝縮水の排出がスムーズな配管施工をしてください。
6.強制排水
蒸気コイルは、バルブが絞られると全閉にならなくても蒸気の圧力が下がり、(中圧配管でバケットトラップを使い、凝縮水を上部に返している場合)凝縮水が戻らず、凍結することがあります。この場合、コイル出口配管にサーモスタットを取付け、ドレンの温度が50℃位になると、強制的に制御弁を開けて凝縮水を排出するようにしてください。(または、配管トラップにシリコンゴム系のコードヒータを直接巻き付ける方法もあります)
7.予熟コイル
気象条件が厳しい場合は、予熱コイルと加熱コイルを組み合わせ、予熱コイルは自動制御を行わず、加熱コイルのみで制御を行う方法もあります。
その他のコイル凍結対策
1.コイルの水抜きに関して
冬期にコイルの水抜きを行う場合は、標準コイルでは水が抜けにくく不十分なため、オールヘッダ式コイルの採用をご検討下さい。(この場合、コストが割高になりコイル幅もやや大きくなります。)
2.不凍液の使用
不凍液を配管の保護を含めて使用します。(コストがかかるので、北海道など寒冷地で使用されます。)
3.施工上・メンテナンス上の留意点
- 凍結防止自動制御の竣工時、冬期前の動作確認実施
(弁類、ダンパ類、循環ポンプ、送風機、熱源など) - 万一の漏水時(配管の漏水も含めて)の排水ルート
(土手、オーバフロー、床排水など)の確保 - コイルの水抜き確認
- 保守管理者への取扱説明とOJT教育の実施
空調機コイル、配管の凍結事故は異常寒波のときに問題となり、常時使わないシステムで、いざ使うときに働かないようでは意味がありません。そのため、フェールセイフなどの考えを取り入れた信頼性の高い、単純なシステムが望まれます。また、一般的に凍結事故の再現性は困難です。計算で確かめても、偏流、コイル銅管破裂の現象(一般には管内水が部分的に凍結し、膨張するため、Uベントなどの水圧が上昇し破裂します。したがって、管内水全体が凍結する前に破裂することがあります。)は、計算と合致しないことのほうが多く、真の原因を突き止めることは困難です。設計上、施工上疑問があるときは、ご相談ください。